家族や親戚など身内にがんにかかった人がいる人は、
いずれ自分も!? と不安になる人も多いと思います。
この記事では、がんと遺伝の関係、注意すべき人はどんな人なのかについて検証していきます。
この記事を読み終えると、がんと遺伝の関わりや、遺伝の可能性について
知らなかった知識を得ることが出来ると思いますので、是非参考にしてください。
目次
がんは遺伝するの!?

がんはできればかかりたくない病気ですが、がんはそもそも遺伝するのでしょうか?
ここでは、がんが遺伝とどう関わりがあるのかについて解説してきます。
遺伝子疾患とは
遺伝子が原因でかかる病気はたくさんあります。
たとえ同じ病気に関連したものであっても、その種類は複数存在することが分かっており、
遺伝子によってその病気に与える影響や大きさが異なります。
一つの遺伝子に異常があることが原因で発症する病気を「遺伝子疾患」といいます。
遺伝子疾患は、「単一遺伝子病」・「多因子遺伝疾患」・「染色体異常」などがあり、
遺伝子が親から子に伝わる場合と、遺伝子が突然変化することによって異常が起こる場合が
あります。
参照:都立駒込病院「がんと遺伝の関係 ~がんが遺伝する可能性と遺伝性腫瘍について~」
参照:東京女子医科大学 遺伝子医療センター ゲノム診療科「遺伝性疾患とは」
遺伝性腫瘍とは
「遺伝子腫瘍」とは、遺伝子疾患の一つということがわかりましたが、
どのような病気なのでしょうか?
人はがんを抑える「がん抑制遺伝子」を2つ持って生まれてきます。
この2つの「がん抑制遺伝子」は母親と父親からそれぞれの由来で作られますが、
2つのがん抑制遺伝子のうち1つは、生まれつき変化してまい機能していないケースがあります。
このケースでは、1つの「がん抑制遺伝子」だけで戦わないといけないため、
正常な人よもがんにかかりやすいのです。
この「がん抑制遺伝子」の異常が原因でかかるがんを「遺伝性腫瘍」といい、約2分の1の確率で
次の世代へ遺伝すると言われています。
そのため、がん抑制遺伝子に異常がある人は注意する必要があります。
参照:国立がん研究センター「遺伝性腫瘍・家族性腫瘍」
遺伝子診療の内容
染色体(※)や遺伝子の異常について、
また生活習慣病などが原因で異常が起きているのか等について
受診することを「遺伝子診療」といいます。
具体的には、以下のような診療内容が行われています。
(※)染色体・・・細胞核の中にある46本の棒状の小体のことで、
遺伝や性を決定する重要な役割を果たすもの。
・遺伝カウンセラーとよばれる専門家による相談
・遺伝子検査
・生化学検査(血液や尿を調べることで体のどこに異常あるのかを調べる検査)
・羊水検査(妊娠中の母体の羊水を調べて胎児の染色体に異常がないか調べる検査)
・母体血胎児染色体検査(過去に染色体に異常がある胎児を妊娠・出産したことがある
女性を対象とした羊水検査)
等
参照:大阪大学医学部付属病院「遺伝子診療部」
遺伝性腫瘍の原因

前述でも少し触れましたが、遺伝性腫瘍の原因は「がん抑制遺伝子」の異常という事です。
なぜ遺伝性腫瘍になるのかについてもう少し詳しく解説していきます。
なぜ遺伝性腫瘍になるの?
なぜ遺伝性腫瘍になるのでしょうか?
同じ家系の中で発症するがんを「家族性腫瘍」といいます。
変化した遺伝子が親から子へ遺伝する事に加え、同じ環境で同じ食生活を
過ごす影響も考えられます。
特に親から子へ遺伝するがんを「遺伝性腫瘍症候群」といい、現在認められている
「遺伝性腫瘍症候群」は数多くあります。
参照:国立がん研究センター中央病院「遺伝子検査について」
主な遺伝性腫瘍症候群
ここでは、主な遺伝性腫瘍症候群をご紹介します。
・リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)
「リンチ症候群」は、大腸がんの遺伝性腫瘍の一つで
別名「遺伝性非ポリポーシス大腸がん」ともいいます。
「リンチ症候群」は、大腸がん全体のうち約2~3%の頻度で発症すると言われており、
平均45歳で発症しています。
また、大腸がん全体でみると平均65歳で発症しているので、リンチ症候群の人は比較的若い
年齢で発症するのが特徴です。
さらに、リンチ症候群は、大腸のほか子宮内膜、小腸、腎盂・尿管・胃などにがんが
発症しやすく、なかでも日本人は胃に発症する頻度が高いと言われています。
・家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)
大腸にポリープ(※1)がたくさんできることを家族性大腸腺腫症(FAP)といいます。
家族性大腸腺腫症は、大腸に100個以上のポリープができていると認められ、
ポリープがたくさん集まっている箇所では5000個以上のポリープができている人もいます。
もしもポリープが100個に満たない場合でも軽症の家族性大腸腺腫症の可能性があります。
家族性大腸腺腫症の人は、大腸がんになる可能性が高いため注意が必要です。
さらに、家族性大腸腺腫症は大腸だけではなく
胃や十二指腸、デスモイド腫瘍、甲状腺乳頭、網膜などにもがんが発生する可能性もあります。
・遺伝性乳がん・卵巣がん
乳がんや卵巣がんは、遺伝が原因で発症することが多いがんと言われています。
例えば、母親が乳がんや卵巣がんを発症したら、その娘は一般の人に比べて約2倍のリスクが
あり、母親と姉が乳がんや卵巣がんを発症したら、妹は一般の人に比べて約4倍のリスクが
あると言われています。
この原因は、「BRCA1」、「BRCA2」という遺伝子が原因であることが分かっています。
これらの遺伝子は女性だけでなく男性にも異常がある場合があり、乳がんや前立腺がんを
発症するリスクが一般に人に比べて高くなります。
遺伝性乳がんや卵巣がんは、比較的若い年齢で発症するのが特徴です。
・リー・フラウメニ症候群
リー・フラウメニ症候群はとても珍しい遺伝性腫瘍症候群で、世界でも400家系にも満たないと
されています。
そのため、日本ではリー・フラウメニ症候群は難病に指定されています。
リー・フラウメニ症候群は「TP53」という遺伝子が原因で※骨軟部肉腫を発症します。
(※悪性では、骨や軟部から発生する肉腫と、内臓がんなどが転移して発症するものがあります。)
骨軟部肉腫のほか、脳腫瘍や乳がん、白血病、胃がん、大腸がん、肺がんなどを発症するリスクが
高くなります。
リー・フラウメニ症候群の人は、50%の人が30歳までに、90%の人が60歳までにがんを
発症します。
・網膜芽細胞腫
網膜芽細胞腫そのものは、出生数15,000~20,000人あたりに一人の割合で発症する
眼のがんです。
もし、遺伝性の網膜芽細胞腫であれば5歳までに発症する可能性が高く、骨や筋肉にもがんが
発症する場合もあります。
このがんは、早期発見・早期治療を行うことで視力や眼球を温存することができます。
また、網膜芽細胞腫は臍帯血(※2)による遺伝子検査によって調べることができ、
この遺伝性腫瘍症候群であるとわかれば、出生後すぐに眼底をはかる検査をすることが
必要です。
(※1)ポリープ・・・皮膚や粘膜からイボのように盛り上がってできた球状のこぶのこと。
(※2)臍帯血 ・・・お母さんと赤ちゃんをつないでいる、へその緒や胎盤の中に含まれている
血液のこと。
参照:国立がん研究センター「遺伝性腫瘍・家族性腫瘍」
参照:がん治療.com「がんの遺伝(遺伝性腫瘍・家族性腫瘍)|原因、予防など」
参照:がん研有明病院「がんと遺伝の関係性について」
遺伝子検査とは

遺伝子検査とは一体どんな検査でしょうか?
ここでは、遺伝子検査の内容や費用、そして検査がどこで受けれるかについて
詳しく解説していきます。
遺伝子検査の内容は?
遺伝子検査とは、自分が遺伝性腫瘍であるかどうかを調べることができる検査です。
検査方法は血液検査で行い、血液中の白血球細胞から遺伝子の本体であるDNAを取り出し、
遺伝子に異常がないかを調べます。
この検査では、アミノ酸配列を調べることで遺伝子の異常があるかを調べるため、
非常に手間と時間がかかる検査です。
もし、「陽性」と判断されれば、自分自身と家族の予防策を考えることが必要です。
参照:がん.com「がんの遺伝(遺伝性腫瘍・家族性腫瘍)|原因、予防など 」
遺伝子検査はどこで受けれるか
遺伝子検査は、一体どこで受けることができるのでしょうか?
実は、遺伝子検査はどの医療機関でも受けれるとは限りません。
例えば、医療機関に「遺伝子診療部」があるなど、遺伝子の研究を行っている医療機関で
受けることができます。
検査を受けるには、紹介状が必要な医療機関もありますので、事前に医療期間に確認することを
おすすめします。
参照:がん.com「がんの遺伝(遺伝性腫瘍・家族性腫瘍)|原因、予防など 」
遺伝子検査の費用は?保険は適用?
遺伝子検査の費用は、疾患内容や医療機関によって値段が異なりますが、
およそ数万円~20万円ほどかかります。
また、一部の疾患については健康保険の対象となっています。
遺伝子検査は、検査前に遺伝カウンセリングを行いますが、健康保険の対象となっている
疾患については、この費用も保険が適用されます。
参照:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院「臨床ゲノム科 よくある質問」
まとめ
がんは、遺伝子に異常があれば正常の人よりがんになりやすく、その遺伝子は種類によりますが
約半分の確率で親から子へ伝わるものがあるということがわかりました。
特に、家族や親戚に同じがんを発症している人は、遺伝性腫瘍症候群の可能性があるので、
遺伝子検査で調べる、定期的にがん検診を受診する等の注意が必要です。
自分の遺伝子は変えることができません。
早め早めでの医療機関で検診等で予防、
かかりつけ医等の専門家からの知識の吸収、
がんの相談窓口「がん相談支援センター」への相談等
なるべく自分だけで抱え込まずに
第三者を巻き込んでの予防を徹底するように
行動していきましょう!